GP北九州の結果から見るスタンダード考察
2013年8月26日 TCG全般呪禁バントの優勝で幕を閉じたGP北九州。残り少ないこの環境のスタンダードですが、今週末は晴れる屋オープンスタンや、9/16にはPWCで総まとめとも言える3人チームスタンダードがあります。せっかくグランプリの結果も出たことですし、今一度スタンダードのメタゲームを考察してみたいと思います。
1.環境の王者はキブラーグルール
世界選手権でベールを脱いだキブラーグルールは瞬く間にスタンダードを席巻し、各地のGPTやPTQで次々と結果を残しトップメタとなりました。
そもそもキブラーグルールとは?M14発売前の赤単t緑(赤寄りグルール)からキブラーグルール(緑寄りグルール)に変わった理由とは?このあたりから簡単に振り返りたいと思います。
M14発売前といえば、環境は雑多だったものの「ドランリアニ」がトップメタとして君臨していました。赤単t緑はその「ドランリアニ」に有利で、往々にして序盤がマグロになりがちなリアニを《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》を絡めた高速ビートで制するというデッキでした。
しかしM14で《漁る軟泥/Scavenging Ooze》が出たことでリアニは激減。そこに押さえ込まれていた「ジャンド」や「トリコ」が戻ってくると、赤単t緑の価値はもうありませんでした。
赤単t緑は
《流城の貴族/Stromkirk Noble》
《ラクドスの哄笑者/Rakdos Cackler》
《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》
《火拳の打撃者/Firefist Striker》
といった軽量クリーチャーが軒並みリアニに強かったのですが、ジャンドの《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned》やトリコの《至高の評決/Supreme Verdict》には弱いカードなので、リアニがいないフィールドではあまり使う価値はありません。
しかし《火打ち蹄の猪/Flinthoof Boar》や《ゴーア族の暴行者/Ghor-Clan Rampager》、生物を並べての《地獄乗り/Hellrider》など強力なカードがグルールにあることは事実です。
そこでメインカラーを緑することで《絡み根の霊/Strangleroot Geist》という除去耐性のある優秀な2マナ域を迎え入れ、マナクリを採用することでスピードを落とさず、従来のグルールより土地を増やし《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》や幅を利かせられる《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》が入り、仕上げにリアニを貶めた張本人《漁る軟泥/Scavenging Ooze》が加わったキブラーグルールが誕生しました。
マナクリと《絡み根の霊/Strangleroot Geist》と合わせると非常に強力な動きをする《ドムリ・ラーデ/Domri Rade》までいるこのデッキの強さは本物でしたが、おそらくこれだけではミッドレンジに対して明確な有利は付きません。あくまでビートダウン、除去をたくさん打ち込まれれたあとに重強カードでフタをされればそれまでです。
しかしそれを許さないのがサイドに搭載された《燃え立つ大地/Burning Earth》。3色デッキ相手には「そっちだけマナバーブ」ともなるこのカードのおかげで、キブラーグルールはミッドレンジに強いビートダウンとなり環境の頂点まで登り詰めました。
2.キブラーグルールの弱点
そんなキブラーグルールにも、もちろん弱点はあります。
1つ目は《燃え立つ大地/Burning Earth》を4枚採用していることでコントロール対策はほぼこれに依存しているということ。《燃え立つ大地/Burning Earth》の効かないコントロールにはサイドから入れられるカードが極端に少ないのです。
そこで登場したのがMOで徐々に結果を出し、北九州では多数のトッププロが使用すると共にTOP8にも1人を送り込んだ「黒緑ミッドレンジ」です。
ジャンドから赤を抜いたようなこの黒緑ミッドレンジは、もちろんジャンドに比べるとカードパワーは多少落ちるものの《燃え立つ大地/Burning Earth》の効かないコントロールとしてその地位を確立しました。
そもそもジャンドはM14で《漁る軟泥/Scavenging Ooze》に加えて《生命散らしのゾンビ/Lifebane Zombie》という非常に強力なパーツが加わり、黒緑の占める割合が大きくなっていたので移行はスムーズにできたのではないかと思われます。
一応この黒緑ミッドレンジに対してキブラーグルールはサイドに《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts》や、これまたM14から加わった強力なプレインズウォーカー《紅蓮の達人チャンドラ/Chandra, Pyromaster》を採用することである程度対策はできるのですが、《燃え立つ大地/Burning Earth》を4枚採っている以上そこまでスロットは裂けないので、今後《燃え立つ大地/Burning Earth》の枚数も考えないといけません。(事実、北九州のTOP8のキブラーグルール2人のうち1人は《燃え立つ大地/Burning Earth》が3枚に抑えられていました。《燃え立つ大地/Burning Earth》で死ぬコントロールは勝ち残れないことを考えた調整ではないかと思います。)
キブラーグルールの弱点は他にもあります。明確に苦手なカードが2種類あり、それを採用しているデッキはやはり相性が良くありません。
《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》と《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》です。
《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》はもちろん貼るクリーチャーにもよりますが、これを貼ってくるのは「呪禁バント」か、《ロクソドンの強打者/Loxodon Smiter》など貼ると《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》圏外のサイズになる「ナヤミッドレンジ」なので結果対処ができなくて《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》1枚で負けることも多々あります。
ナヤの《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》はサイドからですが、メインの《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》がこれまた構造上どうやっても1:2交換されることが多い難敵。どちらのカードもキブラーグルールの除去が《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》と《ドムリ・ラーデ/Domri Rade》である以上仕方のないことなのですが、サイドからでも対処しにくいこの2種類のカードはキブラーグルールの苦手なところで、それを擁する呪禁バントとナヤは相性が悪いと言えるでしょう。
3.その先のメタを読む
呪禁バントが強いと思って調整していたとき、1つ思ったことが《シミックの魔除け/Simic Charm》がグルールに強いということでした。《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》イージーウィン以外は結局殴りあうことになるので、一度バウンスするだけでも効果は絶大であると感じました。
グランプリ結果で高橋優太プロの「the Last Delver」を見たときは脱帽でした。その時は気づきませんでしたが、「バウンスしてトラフトで殴る!強い!」ってどこかで聞いたことあるフレーズ…はい、Delverです。使ってたのに全然気づきませんでした。
デッキについてはご本人の解説がGPのカバレッジにあるので省略させていただきますが、メタゲームを読みきった本当に素晴らしい選択だったと思います。
きっと黒緑ミッドレンジの《冒涜の悪魔/Desecration Demon》には何もさせなかったでしょう(笑
現在の上位メタに強いデッキですし、以前Delverを使っていた人も多いと思うので、今後使用者は増えるかもしれませんね。
4.まとめ
王者キブラーグルール、対抗馬の黒緑ミッドレンジ・呪禁バント・ナヤ。メタを読んだDelver。
振り返るとGPのトップ8を紹介しただけな気もします。あまり参考にならなかったらすいません。とりあえずはトップメタ間違いなしと言われ対策されたにも関わらず、TOP8に2人を送り込んだキブラーグルールの強さに他がどれだけこれからも対抗していけるのか。
残り少ないこの環境のスタンダードですが、是非楽しみましょう!
MTG Cardshop-Nage http://nage.ocnk.net/
※M14価格改定しました!
《テューンの大天使/Archangel of Thune》3280
《影生まれの悪魔/Shadowborn Demon》860
《紅蓮の達人チャンドラ/Chandra, Pyromaster》1590
《カロニアのハイドラ/Kalonian Hydra》2640
《生命散らしのゾンビ/Lifebane Zombie》1140
《ザスリッドの屍術師/Xathrid Necromancer》660
《燃え立つ大地/Burning Earth》560
《漁る軟泥/Scavenging Ooze》1980
《漸増爆弾/Ratchet Bomb》240
《変わり谷/Mutavault》1620
また、スタンダードのローテーションに合わせ、イニストラード値下げしました!かなりお求めやすくなっているので、モダンで活躍する可能性のあるカードを是非お探し下さい!
1.環境の王者はキブラーグルール
世界選手権でベールを脱いだキブラーグルールは瞬く間にスタンダードを席巻し、各地のGPTやPTQで次々と結果を残しトップメタとなりました。
そもそもキブラーグルールとは?M14発売前の赤単t緑(赤寄りグルール)からキブラーグルール(緑寄りグルール)に変わった理由とは?このあたりから簡単に振り返りたいと思います。
M14発売前といえば、環境は雑多だったものの「ドランリアニ」がトップメタとして君臨していました。赤単t緑はその「ドランリアニ」に有利で、往々にして序盤がマグロになりがちなリアニを《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》を絡めた高速ビートで制するというデッキでした。
しかしM14で《漁る軟泥/Scavenging Ooze》が出たことでリアニは激減。そこに押さえ込まれていた「ジャンド」や「トリコ」が戻ってくると、赤単t緑の価値はもうありませんでした。
赤単t緑は
《流城の貴族/Stromkirk Noble》
《ラクドスの哄笑者/Rakdos Cackler》
《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》
《火拳の打撃者/Firefist Striker》
といった軽量クリーチャーが軒並みリアニに強かったのですが、ジャンドの《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned》やトリコの《至高の評決/Supreme Verdict》には弱いカードなので、リアニがいないフィールドではあまり使う価値はありません。
しかし《火打ち蹄の猪/Flinthoof Boar》や《ゴーア族の暴行者/Ghor-Clan Rampager》、生物を並べての《地獄乗り/Hellrider》など強力なカードがグルールにあることは事実です。
そこでメインカラーを緑することで《絡み根の霊/Strangleroot Geist》という除去耐性のある優秀な2マナ域を迎え入れ、マナクリを採用することでスピードを落とさず、従来のグルールより土地を増やし《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》や幅を利かせられる《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》が入り、仕上げにリアニを貶めた張本人《漁る軟泥/Scavenging Ooze》が加わったキブラーグルールが誕生しました。
マナクリと《絡み根の霊/Strangleroot Geist》と合わせると非常に強力な動きをする《ドムリ・ラーデ/Domri Rade》までいるこのデッキの強さは本物でしたが、おそらくこれだけではミッドレンジに対して明確な有利は付きません。あくまでビートダウン、除去をたくさん打ち込まれれたあとに重強カードでフタをされればそれまでです。
しかしそれを許さないのがサイドに搭載された《燃え立つ大地/Burning Earth》。3色デッキ相手には「そっちだけマナバーブ」ともなるこのカードのおかげで、キブラーグルールはミッドレンジに強いビートダウンとなり環境の頂点まで登り詰めました。
2.キブラーグルールの弱点
そんなキブラーグルールにも、もちろん弱点はあります。
1つ目は《燃え立つ大地/Burning Earth》を4枚採用していることでコントロール対策はほぼこれに依存しているということ。《燃え立つ大地/Burning Earth》の効かないコントロールにはサイドから入れられるカードが極端に少ないのです。
そこで登場したのがMOで徐々に結果を出し、北九州では多数のトッププロが使用すると共にTOP8にも1人を送り込んだ「黒緑ミッドレンジ」です。
ジャンドから赤を抜いたようなこの黒緑ミッドレンジは、もちろんジャンドに比べるとカードパワーは多少落ちるものの《燃え立つ大地/Burning Earth》の効かないコントロールとしてその地位を確立しました。
そもそもジャンドはM14で《漁る軟泥/Scavenging Ooze》に加えて《生命散らしのゾンビ/Lifebane Zombie》という非常に強力なパーツが加わり、黒緑の占める割合が大きくなっていたので移行はスムーズにできたのではないかと思われます。
一応この黒緑ミッドレンジに対してキブラーグルールはサイドに《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts》や、これまたM14から加わった強力なプレインズウォーカー《紅蓮の達人チャンドラ/Chandra, Pyromaster》を採用することである程度対策はできるのですが、《燃え立つ大地/Burning Earth》を4枚採っている以上そこまでスロットは裂けないので、今後《燃え立つ大地/Burning Earth》の枚数も考えないといけません。(事実、北九州のTOP8のキブラーグルール2人のうち1人は《燃え立つ大地/Burning Earth》が3枚に抑えられていました。《燃え立つ大地/Burning Earth》で死ぬコントロールは勝ち残れないことを考えた調整ではないかと思います。)
キブラーグルールの弱点は他にもあります。明確に苦手なカードが2種類あり、それを採用しているデッキはやはり相性が良くありません。
《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》と《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》です。
《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》はもちろん貼るクリーチャーにもよりますが、これを貼ってくるのは「呪禁バント」か、《ロクソドンの強打者/Loxodon Smiter》など貼ると《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》圏外のサイズになる「ナヤミッドレンジ」なので結果対処ができなくて《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》1枚で負けることも多々あります。
ナヤの《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》はサイドからですが、メインの《ボロスの反攻者/Boros Reckoner》がこれまた構造上どうやっても1:2交換されることが多い難敵。どちらのカードもキブラーグルールの除去が《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》と《ドムリ・ラーデ/Domri Rade》である以上仕方のないことなのですが、サイドからでも対処しにくいこの2種類のカードはキブラーグルールの苦手なところで、それを擁する呪禁バントとナヤは相性が悪いと言えるでしょう。
3.その先のメタを読む
呪禁バントが強いと思って調整していたとき、1つ思ったことが《シミックの魔除け/Simic Charm》がグルールに強いということでした。《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》イージーウィン以外は結局殴りあうことになるので、一度バウンスするだけでも効果は絶大であると感じました。
グランプリ結果で高橋優太プロの「the Last Delver」を見たときは脱帽でした。その時は気づきませんでしたが、「バウンスしてトラフトで殴る!強い!」ってどこかで聞いたことあるフレーズ…はい、Delverです。使ってたのに全然気づきませんでした。
デッキについてはご本人の解説がGPのカバレッジにあるので省略させていただきますが、メタゲームを読みきった本当に素晴らしい選択だったと思います。
きっと黒緑ミッドレンジの《冒涜の悪魔/Desecration Demon》には何もさせなかったでしょう(笑
現在の上位メタに強いデッキですし、以前Delverを使っていた人も多いと思うので、今後使用者は増えるかもしれませんね。
4.まとめ
王者キブラーグルール、対抗馬の黒緑ミッドレンジ・呪禁バント・ナヤ。メタを読んだDelver。
振り返るとGPのトップ8を紹介しただけな気もします。あまり参考にならなかったらすいません。とりあえずはトップメタ間違いなしと言われ対策されたにも関わらず、TOP8に2人を送り込んだキブラーグルールの強さに他がどれだけこれからも対抗していけるのか。
残り少ないこの環境のスタンダードですが、是非楽しみましょう!
MTG Cardshop-Nage http://nage.ocnk.net/
※M14価格改定しました!
《テューンの大天使/Archangel of Thune》3280
《影生まれの悪魔/Shadowborn Demon》860
《紅蓮の達人チャンドラ/Chandra, Pyromaster》1590
《カロニアのハイドラ/Kalonian Hydra》2640
《生命散らしのゾンビ/Lifebane Zombie》1140
《ザスリッドの屍術師/Xathrid Necromancer》660
《燃え立つ大地/Burning Earth》560
《漁る軟泥/Scavenging Ooze》1980
《漸増爆弾/Ratchet Bomb》240
《変わり谷/Mutavault》1620
また、スタンダードのローテーションに合わせ、イニストラード値下げしました!かなりお求めやすくなっているので、モダンで活躍する可能性のあるカードを是非お探し下さい!
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